●特定技能とは?
在留資格「特定技能」とは、日本の産業界における深刻な人手不足を解消するため、2019年の4月から新たに導入された在留資格のことです。
「特定技能1号」外国人の就労までの4ステップ
●特定技能外国人のターゲットは大きく2種類...
①試験を受ける必要のない人材
②試験を受ける必要のある人材
に分かれます。
①は既に「特定技能」の在留資格で働いている外国人です。(同じ分野で転職活動中or違う分野で転職活動中)
②は新規に「特定技能」で働きたい外国人です。(技能実習生から移行or試験等に合格してビザの変更etc)
わかりやすく以下の4つに分けることができます。
Ⅰ 既に特定技能として働いていて、同じ分野の仕事に転職する
Ⅱ 既に特定技能として働いていて、違う分野の仕事に転職する
Ⅲ 元技能実習生で、実習時と同じ分野の仕事に転職する
※既に帰国してしまっている人も対象になります。
Ⅳ 試験に合格して、新しく特定技能として働く
※下記の方も対象になります。
・元技能実習生で、他の分野で働きたい人(国内・海外)
・留学生など、他の在留資格で在留している人
・現在は母国にいるが、これから特定技能で初めて入国する人
上図で特定技能外国人の属性を分布した中で、ⅠとⅢの方に関しては、「日本語試験」と「技能評価試験」は受験する必要がありません。
逆に「日本語試験」と「技能評価試験」を必ず受験しなければいけないのは、ⅡとⅣの方になります。ⅡとⅣの方を自社で雇用する場合、以下の4つのステップを就労するまでに経る必要がありますので、ご確認ください。
- 技能評価試験・日本語能力試験に合格する
- 受け入れ企業と雇用契約を締結する
- 国内在留者は在留資格変更申請 / 国外から呼び寄せなら在留資格認定証明書交付申請を行う
- 申請許可が無事に降りてから、就業開始
以上の4ステップは大まかな流れとして記述したため、実際には各段階において必要な作業があります。在留資格申請のために該当の外国人のための支援計画を策定したり、就業開始後にはそれぞれ支援計画に従って支援の一切を実行したりする等の必要がありますのでご注意ください。
「特定技能1号」の取得に必要な試験
「特定技能1号」を取得するために、外国人材が①日本で働く上での日本語能力と②該当分野での技能を有している、ということを証明する必要があります。
なにをもって、この2点の能力を有していると証明となるのか。
下記2つの公的試験を外国人材が受験し合格することで証明することが可能です。
①生活や業務に必要な日本語能力
- 「日本語能力試験(N4以上)」もしくは「国際交流基金日本語基礎テスト(A2レベル以上)」
②一定の専門性・技能を用い即戦力として働くために必要な知識や経験
「技能評価試験」
①生活や業務に必要な日本語能力
日本語能力を試す試験には「日本語能力試験」あるいは「国際交流基金日本語基礎テスト」の2種類があります。
ここではそれぞれの試験日程や会場をご紹介します。
日本語能力試験(JLPT)
こちら聞いたことのある方は多いのでは無いでしょうか。
公益財団法人日本国際教育支援協会と独立行政法人国際交流基金が主催している日本ではもっともポピュラーな日本語試験になります。読解・聴解・文法・語彙と4技能の能力をN1〜N5という5段階で測定可能で、N1にいくほどレベルが上がっていきます。特定技能としてビザ変更を行うには、N4レベル以上を取得する必要があります。
以下試験の概要になります。
■実施日:毎年7月と12月の第一日曜日に行われます。
*申し込み期間が約1ヶ月間と非常に限定されています。それぞれ4ヶ月前に一度Webサイトをチェックして申し込み日時を確認しておく必要があります。自社の外国人に受験させたい場合には特に、早めにアラートをかけてあげるようにすると良いでしょう。
■試験実施場所:日本の47都道府県で開催されています。世界では実施回によって異なりますが、令和元年12月1日の試験では、世界76の国と地域、232都市において試験が行わる予定です。
■試験方法:マークシート方式です。
■受験申し込み:日本語能力試験受付センターのサイトから行います。
国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)
この試験は、国際交流基金が主催している日本語能力試験になります。
このテストは、ヨーロッパ言語共通参照枠(CEFR)に沿って国際交流基金が開発した「JF日本語教育スタンダード」の考えに基づき、運営されています。どちらかというとより会話力を重視した実践的な日本語能力の有無を測定する試験と言えます。
A1・A2・B1・B2・C1・C2とレベル分けがなされており、C2にいくほどレベルが上がっていきます。
特定技能としてビザ変更を行うには、A2レベル以上を取得する必要があります。
<試験の概要>
■実施日:各国毎のスケジュールはこちらで公開されています。特定技能外国人を認定するためのテストとも言え、令和元年9月より、日本語能力テストよりも高い頻度でテストが行われています。
■試験実施場所:実施場所は日本・ベトナム・モンゴル・インドネシア・カンボジア・フィリピン・ネパール・タイ・ミャンマーです。
■試験方法:CBT方式(パソコンでテスト)です。
■受験申し込み:国際交流基金のウェブサイトから行います。
従来までは、日本語能力試験(JLPT)が日本語能力を測る試験としては主流でしたが、国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)ができたことにより、日本語能力の評価基準も変わってくることが想定されます。
国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)の背景にある考え方は、JFスタンダードと言われるもので実際に外国人が日本で働き、生活する上で「日本語で何ができるか」を測ることを重要視しています。そのため、現実社会で使える日本語の習得を望むのであれば、国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)を意識した教育をすることをお薦めいたします。
②一定の専門性・技能を用い即戦力として働くために必要な知識や経験
受け入れ分野で即戦力として活動するために必要な知識または経験を調査するための試験になります。技能評価試験と聞くと、技能実習生を受け入れている企業様は、実技試験(実際に作業道具を用いて作業を行うこと)を想定されるかもしれませんが、実際はどの分野であっても、ペーパーテストがメインになっております。ただし、回答するには各分野ごとに専門的な知識が必要な問題ばかりになっているので、当たり前ですが、初見では合格するのが難しい内容になっています。(複数の作業写真を見て、正しい作業手順に並び替える/想定されうる作業現場の条件を指定された上で、作業工程やどのように顧客対応を行うかを口頭で説明する等)。日本国内のみならず、将来的には二国間協定( MOC)締結国でも随時開催される予定です。(建設業など、一部の技能試験では、既に国外で実施されています。)
各分野の技能試験
技能試験は各分野ごとに試験の内容や実施形式が異なっています。
それぞれの最新情報及び詳細については下記のリンクから試験を監督する団体のページで確認できるようになっています。
ーー各分野の技能試験ーー
介護、ビルクリーニング 、素形材産業、産業機械製造業、電気・電子情報関連産業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業
受験資格
令和2年4月1日以降実施される試験から「在留資格を有する方であれば受験することが可能」となりました。
*試験合格がそのまま在留資格認定証明書交付や在留資格変更許可を保証するものではありません。
参照:法務省「試験の適正な実施を確保するための分野横断的な方針」
これにより技能実習生や観光などの短期滞在で在留している方も受験が可能となったわけですが、特定技能外国人の受入れ数を増やしたいという国の意図が反映されていると言えるでしょう。
また、実習期間中に技能試験を受験し3年満了後に別分野の企業へ転職を希望する技能実習生が増える可能性がかなり高くなっています。
今後はますます外国人材への定着支援に対して投資をしていかなければ、3年経過し戦力になってきたところでいなくなってしまうケースが増えてきてしまう可能性もあります。
特定技能の今後の展開
ここでは「特定技能」の取得に必要な技能試験と日本語試験についてまとめました。
しかししばらくの間は技能実習2号・3号から無試験で資格変更される方がメインになるかと思われます。
企業としても、関連業務に関して「勉強」してきた人材よりも、実際に「経験」してきた人材のほうが必要だからです。
技能実習満了後一度母国に帰国していた人材の中は、再度日本に戻ってきたいという人材は大勢いますし、今後も増えて行くことが予想されます。
したがって「実習生経験者」の特定技能1号取得者がメインストリームになるのは間違いありません。
一方、コロナウイルス感染症の影響により、丸2年間留学生や技能実習生の入国が制限されてきました。今後2年間の空白期間の影響により外国人材不足が深刻になるかもしれません。その時、今はまだ少数であった特定技能➡︎特定技能での転職者の増加が予想されます。
特に、企業様によってはより魅力的な給与条件・福利厚生を提示し、他社で働いている特定技能人材の採用を強化する流れができてくるかもしれません。