1.特定技能制度とは
改正入管法が2019年4月1日に施行され、新しい在留資格「特定技能」が設けられました。
これを受け、人手不足が深刻であると認められた12の分野(上図参照)において外国人労働者の就労が可能となりましたが、ではどうすれば企業が特定技能外国人を雇用することができるのか?
第1章 在留資格「特定技能」創設の目的
〇 中小・小規模事業者をはじめとした人手不足は深刻化しており、我が国の経済・社 会基盤の持続可能性を阻害する可能性が出てきているため、生産性向上や国内人材確 保のための取組を行ってもなお人材を確保することが困難な状況にある産業上の分 野において、一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人を受け入れていく仕組み を構築することが求められているものです。
つまり、これまでの就労資格では認められてこなかった「単純作業」や「現場作業」に外国人を就かせてもよい、という制度です。
「特定技能」は2種類の在留資格
「特定技能1号」とは、特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格であり、これまでの就労資格との違いは、在留資格の認可に「学歴」や「母国における関連業務への従事経験」が不要とされていることです。そして、特定技能1号では、外国人支援が必須です。過去2年間外国人社員が在籍していない場合は「登録支援機関」への委託が必須です。
このように、受け入れる企業側に細かなルールが課せられる一方で、取得希望者(外国人人材)からすると、非常に敷居の低い資格となっています。
「特定技能2号」は、特定産業分野(2022年12月時点では建設分野と造船・舶用工業分野のみ)に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格です。
①「特定技能2号」への移行条件
「特定技能2号」は「特定技能1号」よりも高い技術水準を持つものに対して付与される在留資格となっています。分野別に実施される試験等により、その技術水準の高さを確認されます。そのため「特定技能1号」を終了したものが、自動的に「特定技能2号」に移行できるものではなく、あくまで試験に合格し、高い技術水準を有していると認められれば、「特定技能1号」の期間中であったとしても「特定技能2号」へ資格変更することが可能になります。
②在留期限の制限がない
「特定技能2号」は在留期限が無期限であるため、就労先がある限り日本に在留することが可能です。そのため「特定技能2号」まで取得すれば、10年間の日本在留が要件となる「永住権」を取得できる可能性が拓けます。
③家族の帯同が認められる
「特定技能2号」になると、家族の帯同も認められており人材側にとってはかなり魅力の高い在留資格となっております。
④「特定技能2号」移行対象分野
対象分野としては、2021年現在では「建設」と「造船・船舶工業」の2分野のみ1号からの移行が可能となってます。
しかし、2021年11月に法務大臣より、「特定技能2号」の対象分野を拡大する方向であると報道がなされました。
【各在留資格のポイント】
「特定技能1号」で在留する外国人に対しては、受入れ機関又は登録支援機関による支援の実施が求められていることに注意
(特定技能2号については支援の対象外です)。
<<特定技能1号のポイント>>
在留期間 | 1年、6カ月または4カ月ごとの更新、通算で上限5年まで |
技能水準 | 試験等で確認(技能実習2号を終了した外国人は試験等免除) |
日本語能力水準 | 生活や業務に必要な日本語能力を試験等で確認(技能実習2号を終了した外国人は試験免除) |
家族の帯同 | 基本的に不可 |
受け入れ機関または登録支援機関による支援 | 対象 |
<<特定技能2号のポイント>>
在留期間 | 3年、1年または6カ月ごとの更新 |
技能水準 | 試験等で確認 |
日本語能力水準 | 試験等で確認は不要 |
家族の帯同 | (要件を満たせば)可能 |
受け入れ機関または登録支援機関による支援 | 対象外 |
特定技能1号による外国人の受け入れ分野(特定産業分野)は、以下の14分野。
特定技能2号による外国人の受け入れ分野は2022年12月現時点で、以下の2分野のみ。
2.「技能実習」とは何が違う?
①制度の目的が異なります。 |
②「特定技能」資格保持者は同分野内での転職が可能。 |
③受け入れに人数制限がない。 |
①「技能実習」は「技術移転による国際貢献」、「特定技能」は「労働力の確保」と制度の目的が異なります。
現状、技能実習制度が本来の目的から逸れてしまっている実態はありますが、今後、労働力として技能実習生を使うことは難しくなってくるでしょう。
②技能実習生は原則として転職することができませんが「特定技能」資格者は同一分野内で転職が可能です。そのため「技能実習生」よりも「特定技能」資格者はより労使の関係性構築が重要になると考えられます。
③「技能実習」の場合には常勤職員の総数に応じた人数枠(詳しくはこちら)があります。一方で特定技能の場合には「介護」と「建設」分野を除き受け入れ人数に制限がありません。